カレドニアン・ゴルフクラブ会員の皆様へ
いま私はカレドニアンのコースを歩きながら、深い感動に浸っています。と同時に、このゴルフクラブの会員になられた幸運な人たちに、設計者として語りかけたい衝動にかられます。
カレドニアンはそのひとホールひとホールが興奮を呼びます。それぞれのホールが際立った個性を備えており、プレーヤーに強烈な印象を与えるはずです。ティイング・グラウンドに立ったプレーヤーは、どのホールでもその変化の大きさに圧倒されるでしょう。景観の素晴らしさだけでなく、ダイナミックにうなりながら伸びるフェアウェイ、巧みに配置されたバンカーとグリーンと池が、プレーヤーの挑戦意欲をかきたてます。
百年以上も前からこの地で育ってきた杉の巨木は、私たちに静寂と安らぎを恵んでくれます。ゴルフというゲームを楽しむ幸せを、しみじみ味わうことでしょう。
一つとして類型のホールがない、戦略性に富んだ18ホールズは、それぞれ生きいきとして連繋し、ハーモニーしあって続きます。これほど1番から18番ホールに至るまで、リズムの整っているコースは、日本国内はもとより、世界でも数えるほどしかありません。
各設計家が世界の各地に、その地域の環境に調和した名作品と呼ばれるコースをいくつか残しています。しかし、カレドニアンのように全18ホールがそれぞれ世界の名ホールに比肩できるコースは珍しいと、自信をもっていえます。
芸術は自然の素材をもとに、設計者の情熱とオーナーの思い描く高い理想によって生まれいずるものです。カレドニアンはまさに、そのような幸運な星の下に誕生しました。プレーヤーはカレドニアンのグリーンに上るたびに、妙なる造形に戸惑い、奮いたち、緊張の糸を弛めることができないでしょう。
最近の日本のゴルファーなら誰でも、世界の難ホールと称されるグリーンを二つ三つ思い浮かべることは簡単でしょう。その人はカレドニアンのグリーンでボールを打ったとき、世界の名選手たちが神妙な面持でパッティングに入る姿を理解できるでしょう。これは言葉ではいい表せません。あなた自身が体験すれば即座に納得できるはずです。名コースが名選手を育てるというゴルフのセオリーが理解される思います。
カレドニアンの最終ホール18番の池は広く美しい。青い池を縁どる白い渚バンカーはギリシャ神話を彷彿させます。誰でもこの白い砂浜の横を通るとき、生命の神秘とゴルフの奥行きの深さを感じざるを得ないでしょう。
世界のゴルフコース設計者たちは、私がこのようなコースを手がけることが出来たチャンスを羨むでしょう。私はこうしてカレドニアンに立つたびに、神の造りたもうたこの偉大なコースに感謝します。
1990年10月7日 J・マイケル・ポーレットゴルフデザイングループ J・マイケル・ポーレット